Appearance
個人事業主の貸借対照表とは|構成・見方・元入金の仕組みを解説
**貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)**とは、ある時点での「事業の財産状況」を一覧にした書類です。左側に資産、右側に負債と純資産を並べ、左右の合計が必ず一致する構造になっています。
個人事業主が青色申告で65万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿作成と貸借対照表の提出に加え、e-Tax による申告または優良な電子帳簿保存が必要です(国税庁 No.2072 青色申告特別控除)。この記事では、貸借対照表の構成・見方・個人事業主特有の項目について解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
貸借対照表の基本構造
貸借対照表は左右2列で構成されます。
【左側:資産の部】 【右側:負債の部】
現金・預金 未払金・借入金など
売掛金 ─────────────
固定資産 【純資産の部】
事業主貸など 元入金
事業主借
青色申告特別控除前の所得金額
───────────── ─────────────
資産合計 = 負債合計 + 純資産合計「資産合計 = 負債合計 + 純資産合計」が成立することを「バランスが取れている」といいます。この等式が成立しない場合は仕訳に誤りがあります。
なお、青色申告決算書の様式上、事業主貸は純資産側ではなく資産の部(左側)の末尾に記載されます(国税庁「青色申告決算書(一般用)の書き方」)。
資産の部
資産とは、事業が保有している財産です。流動資産(1年以内に現金化できるもの)と固定資産(長期保有するもの)に分かれます。
流動資産
| 科目 | 内容 |
|---|---|
| 現金 | 年末時点の手元現金残高 |
| 普通預金 | 事業用口座の年末残高 |
| 売掛金 | 請求済みで未入金の売上代金 |
| 前払費用 | 翌年分を先払いした費用(年払い保険料など) |
| 棚卸資産 | 商品在庫(フリーランス・サービス業は通常なし) |
固定資産
| 科目 | 内容 |
|---|---|
| 工具器具備品 | パソコン・カメラなど(帳簿価額=取得価額-累計減価償却額) |
| ソフトウェア | 購入したソフトウェアライセンスなど(無形固定資産) |
固定資産は購入時の金額ではなく、減価償却後の帳簿価額で計上します。
投資その他の資産
| 科目 | 内容 |
|---|---|
| 敷金 | 事務所の敷金・保証金(将来返還される性質のもの) |
負債の部
負債とは、将来支払い義務のある金額です。
| 科目 | 内容 |
|---|---|
| 未払金 | 支払義務が確定しているが年末時点で未払いのもの |
| 未払費用 | 発生しているが未払いの費用(家賃など) |
| 前受金 | 受け取り済みだがまだ完了していない仕事の代金 |
| 短期借入金 | 1年以内に返済予定の借入 |
| 長期借入金 | 返済期間が1年超の借入 |
純資産の部(個人事業主特有の構成)
個人事業主の純資産は、法人の「資本金・利益剰余金」に相当しますが、構成が異なります。
| 科目 | 内容 |
|---|---|
| 元入金 | 期首(1月1日)時点の資本残高。前年末の純資産をもとに計算され引き継がれる |
| 事業主借 | 年間を通じてプライベートから事業に投入した合計額 |
| 事業主貸 | 年間を通じて事業からプライベートに引き出した合計額(決算書の様式上は資産の部に記載) |
| 青色申告特別控除前の所得金額 | 損益計算書から転記される当期の利益 |
純資産の計算式
純資産 = 元入金 + 事業主借 − 事業主貸 + 青色申告特別控除前の所得金額事業主貸が多い(生活費に多く使った)ほど純資産は減り、事業主借が多い(自己資金を多く投入した)ほど純資産は増えます。
元入金の仕組み
元入金は個人事業主の純資産の基礎となる科目です。
元入金の計算方法
毎年1月1日に、以下の計算で新しい元入金が確定します。
新元入金 = 前期末の元入金
+ 前期の青色申告特別控除前の所得金額
+ 前期の事業主借
− 前期の事業主貸たとえば、前期末の元入金が100万円、前期の所得が80万円、事業主借が10万円、事業主貸が50万円だった場合:
新元入金 = 100万円 + 80万円 + 10万円 − 50万円 = 140万円この計算は会計ソフトを使っている場合、年度更新時に自動で処理されます。
開業初年度の元入金
開業初年度は、開業時に事業に投入した資金(開業資金)が元入金の初期値になります。会計ソフトを使う場合、仕訳入力ではなく**「期首残高」の入力画面**で資産・負債の残高を直接入力するのが一般的です。
例:事業用口座に50万円を入金して開業した場合、期首残高として「普通預金:500,000円」「元入金:500,000円」と入力します。資産合計と負債・純資産合計が一致していることを確認してください。
貸借対照表の左右が合わないときの原因
複式簿記では左右の合計が必ず一致します。合わない場合は以下を確認します。
よくある原因
① 単式簿記的な仕訳をしている 借方・貸方のどちらかだけを記録し、もう片方を記録していないケースです。複式簿記では必ず両方の科目に同額を記録します。
② 事業主借・事業主貸を使わずに経費を記録している プライベートのお金で経費を払ったときに「経費 / (空欄)」のように記録すると、貸借が合わなくなります。必ず「経費 / 事業主借」と記録します。
③ 期首残高の入力漏れ 会計ソフトを使い始める際に、期首の資産・負債残高を正確に入力していないと、年末時点でずれが生じます。
貸借対照表を見てわかること
貸借対照表は確定申告のためだけでなく、事業の財務状況を把握するためにも有用です。
| 確認ポイント | 意味 |
|---|---|
| 売掛金が多い | 未回収の代金が多い。入金管理を強化する必要がある |
| 純資産がマイナス | 負債が資産を超えている(債務超過)状態 |
| 事業主貸が多い | 生活費として事業資金を多く使っている |
| 現金・預金残高が少ない | 手元資金が不足しており、資金繰りに注意が必要 |
まとめ
- 貸借対照表は「ある時点での財産状況」を示す書類で、左右の合計が必ず一致する
- 個人事業主の純資産は元入金・事業主借・事業主貸・当期所得で構成される
- 元入金は毎期自動的に計算され直し、前期の経営結果が引き継がれる
- 貸借対照表の左右が合わない場合は、仕訳の記録漏れや誤りが原因
- 青色申告65万円控除には貸借対照表の提出が必須
青色申告決算書全体の書き方については「青色申告決算書の見方と書き方」も参照してください。
青色会計では複式簿記による仕訳入力から貸借対照表の自動生成まで対応しています。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。