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家事按分の正しいやり方|税務調査で否認されない根拠の残し方
在宅ワークをしている個人事業主にとって、家賃や光熱費の家事按分は大きな節税ポイントです。一方で「なんとなく50%にしている」「毎年割合が変わっている」という状態では、税務調査で否認されるリスクがあります。この記事では、按分の基準の選び方から根拠の記録方法、割合を変更する場合の対処まで、実務に即して解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
家事按分とは
家事按分とは、事業とプライベートで兼用している支出を事業使用割合に応じて分割し、事業分だけを経費として計上する方法です。自宅で仕事をしている場合の家賃・電気代・通信費などが代表的です。
按分に法定の計算式はありません。ただし、家事関連費は業務の遂行上直接必要な部分を明らかに区分できる場合に限り経費にできるとされており、「合理的な根拠に基づいていること」が求められます。根拠のない割合は税務調査で否認される可能性があります。
家賃の按分:面積基準が基本
家賃の按分は使用面積の割合で計算するのが最も合理的とされています。
計算方法
事業使用割合 = 事業専用スペースの面積 ÷ 住居全体の面積
経費計上額 = 家賃 × 事業使用割合計算例:家賃90,000円、住居全体60㎡のうち仕事部屋12㎡
事業使用割合 = 12㎡ ÷ 60㎡ = 20%
経費計上額 = 90,000円 × 20% = 18,000円事業専用スペースの考え方
| スペースの状況 | 按分の扱い |
|---|---|
| 完全に仕事専用の部屋がある | その部屋の面積で計算 |
| リビングの一角に仕事スペースがある | 仕事スペース分の面積で計算(リビング全体は不可) |
| 寝室で仕事をしている | 仕事スペース分の面積のみ(寝室全体は不可) |
リビングなど生活と仕事が混在するスペースは、**仕事で使う範囲に限定**するのが原則です。「仕事もするから部屋全体を按分する」という主張は認められにくいため注意が必要です。
持ち家の場合
この記事は賃貸住宅を前提としています。 持ち家(ローン中を含む)の場合、家賃は発生しないため、代わりに建物の減価償却費と住宅ローンの支払利息を同じ面積基準で按分して経費計上します。固定資産税も按分が可能です。持ち家の按分は計算が複雑になるため、税理士への相談をおすすめします。
管理費・共益費の扱い
賃貸の場合、管理費や共益費も家賃と同じ按分割合で経費計上できます。駐車場代は事業で車を使っていれば別途按分が可能です。
光熱費の按分:費目ごとに根拠が異なる
光熱費は電気・ガス・水道で事業との関連度が異なるため、費目ごとに考え方を分けるとより適切です。
電気代
仕事用のPC・モニター・照明などを使う電気代は事業と関連が高く、按分計上が認められやすい費目です。
よく使われる按分基準
- 面積基準:家賃と同じ面積比を使う(シンプルで説明しやすい)
- 時間基準:1日の在宅時間のうち仕事時間の割合で計算
時間基準の例:1日16時間在宅、そのうち仕事8時間 → 50%
どちらを使っても問題ありませんが、家賃と異なる基準を使う場合はその理由を説明できるようにしておくと安心です。
ガス代
調理や入浴など生活用途が大半を占めるため、事業との関連が薄い費目です。在宅で仕事をしていてもガス代の按分はハードルが高く、税務調査で否認されやすい傾向があります。
按分するとしても面積基準にとどめておくのが無難です。電気代に時間基準(例:50%)を使っている場合でも、ガス代は面積基準(例:20%)に抑えるなど、事業との関連度に応じて割合に差をつけると合理性を説明しやすくなります。
水道代
ガス代と同様、生活用途が中心です。事業で水を使う理由(調理業・植物栽培など)がなければ、按分は難しいと考えたほうがよいでしょう。
| 費目 | 按分のしやすさ | おすすめ基準 |
|---|---|---|
| 電気代 | ○ 按分しやすい | 面積基準または時間基準 |
| ガス代 | △ 説明が必要 | 面積基準(低めの割合) |
| 水道代 | × 基本は難しい | 事業上の必要性がある場合のみ |
通信費の按分:時間基準が現実的
スマートフォンやインターネット回線はプライベートと兼用が多いため、事業使用時間の割合で按分するのが一般的です。
計算例:インターネット回線月額5,000円、事業使用割合70%
経費計上額 = 5,000円 × 70% = 3,500円割合の目安と根拠
事業使用割合は実態に合った数字を使います。実務では50〜70%程度を設定する事業主が多い傾向がありますが、根拠なく高い割合を設定すると問題になります。
自分の使用実態を振り返って設定し、以下のような記録を残しておくと説明しやすくなります。
- 1週間の通話・通信履歴から事業用の割合を算出した
- 仕事用アプリ・サービスへのアクセス頻度から判断した
固定電話がなくスマートフォン1台で仕事の連絡をすべて行っている場合は、70〜80%程度の按分も合理的と説明できます。
なお、仕事専用のインターネット回線や法人SIMを契約している場合は、その費用を全額経費として計上できます。兼用より専用回線のほうが按分の手間が省け、税務上の説明も不要です。
税務調査で否認されないための記録の残し方
按分が認められるかどうかは「合理的な根拠を説明できるかどうか」にかかっています。以下を記録・保管しておきましょう。
残しておくべき記録
面積の記録
- 賃貸借契約書(住居全体の面積が記載)
- 間取り図に仕事スペースを書き込んだもの
- 仕事スペースの面積をメモしたもの
時間の記録(時間基準を使う場合)
- 仕事の開始・終了時刻のログ(カレンダー・手帳でも可)
- 1週間程度の実績から平均を出した計算メモ
按分割合の根拠メモ
- いつ・どのような根拠で割合を設定したか
- 面積・時間など使用した基準
記録は税務調査の際に提示できる状態で保管しておきましょう。毎日細かくつける必要はありませんが、按分割合を設定した時点での根拠は必ず残しておいてください。
按分割合を変更したい場合
引越しや働き方の変化によって按分割合を変えることは問題ありません。ただし、理由なく毎年割合が変動しているのは不自然に見えます。
変更が合理的と認められやすいケース
- 引越しにより住居面積や仕事部屋の面積が変わった
- 外出営業からフルリモートに移行し在宅時間が増えた
- 仕事の性質が変わり通信費の事業利用が増えた
変更した年は、なぜ割合を変えたのかをメモとして残しておくと説明に困りません。仕訳の摘要欄や別途ノートに一言残しておくだけで十分です。
まとめ
- 家事按分に法定の計算式はないが、「合理的な根拠」が必須
- 家賃は面積基準、通信費は時間基準が基本
- 光熱費は電気代が按分しやすく、ガス・水道は根拠の説明が難しい
- 税務調査に備えて間取り図・面積メモ・割合の設定根拠を保管しておく
- 割合の変更は合理的な理由があれば問題ないが、変更理由を記録しておく
青色会計では仕訳の摘要欄に按分の根拠(「家賃20%按分」など)を記録できます。毎月の仕訳に一言残しておくだけで、税務調査時の説明資料になります。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。