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Webデザイナー・イラストレーターの仕訳例|源泉徴収・ソフト代・機材の経費を解説
Webデザイナー・イラストレーターには、報酬から源泉徴収された状態で入金される、デザインソフトのサブスクリプションやフォント・素材の購入費がかさむなど、他業種にはない収支パターンがあります。この記事では、個人事業主のデザイナー・イラストレーターによくある仕訳例を、収入と経費に分けて一通り整理します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
収入(売上)の仕訳
デザイン・イラストの報酬は源泉徴収の対象
所得税法204条1項1号は、個人に支払う「原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬」などを源泉徴収の対象に挙げています。イラストレーターのさし絵・イラスト制作や、ロゴ・バナー・ポスターなどのグラフィックデザインの報酬は、クライアント(法人や、給与を支払っている個人事業主)が支払う際に所得税を差し引いて支払います。国税庁の通達では、デザインの範囲として工業デザイン・クラフトデザイン・グラフィックデザイン(広告、ポスター、包装紙等のデザイン)・パッケージデザイン・広告デザイン・インテリアデザイン・ディスプレイ・服飾デザインなどが列挙されています。
税額は、支払金額が100万円以下なら 支払金額 × 10.21% です(No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき)。100万円を超える部分には20.42%が適用され、たとえば150万円の報酬なら(150万円 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 204,200円になります。
なお「Webデザイン」という言葉自体は通達に明示されておらず、コーディングやプログラミングのみの報酬は上記の列挙に含まれないため、案件の内容によって源泉徴収の要否が分かれることがあります。請求前にクライアントと源泉徴収の有無を確認し、判断に迷う場合は税務署に相談してください。
請求書発行時
報酬100,000円の案件で請求書を発行した時点では、全額を売掛金として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100,000円 | 売上 | 100,000円 |
売掛金の基本的な流れは売掛金・買掛金の仕訳で解説しています。
入金時(源泉徴収あり)
源泉徴収税額は 100,000円 × 10.21% = 10,210円 で、手取りは89,790円です。差し引かれた源泉税は確定申告で所得税から控除できるため、「事業主貸」で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 89,790円 | 売掛金 | 100,000円 |
| 事業主貸 | 10,210円 |
消費税を区分して請求した場合
請求書等で報酬の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、税抜の報酬額のみを源泉徴収の対象として差し支えないとされています(No.2795)。本体100,000円 + 消費税10,000円 = 110,000円の請求なら、源泉徴収税額は 100,000円 × 10.21% = 10,210円 です(税込110,000円全体に掛けると 11,231円 になり、手取りが変わります)。
請求時に 売掛金 110,000円 / 売上 110,000円 と計上した場合(税込経理)、入金時の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 99,790円 | 売掛金 | 110,000円 |
| 事業主貸 | 10,210円 |
個人クライアントの場合は源泉徴収されないことがある
源泉徴収の義務があるのは、法人や、従業員に給与を支払っている個人事業主などです。給与を支払っていない個人が支払う報酬・料金は源泉徴収の対象になりません(No.2502 源泉徴収義務者とは)。個人経営の店舗からロゴ制作を受注して源泉徴収なしで80,000円が入金された場合は、通常どおり処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 80,000円 | 売掛金 | 80,000円 |
同じ仕事内容でも、相手が源泉徴収義務者かどうかで入金額が変わる点に注意してください。
経費の仕訳
デザインソフトのサブスクリプション(Adobe等)
Adobe Creative CloudやFigmaなどのサブスクリプション料金は、通信費(または消耗品費など)で処理します。科目の選択そのものより、毎年同じ科目で継続して処理することが大切です。月額8,000円が口座から引き落とされた場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 8,000円 | 普通預金 | 8,000円 |
フォント・素材の購入
フォントのライセンスやストックフォト・素材集の購入費は、少額であれば消耗品費で処理できます。買い切りのフォントライセンス15,000円を購入した場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 15,000円 | 普通預金 | 15,000円 |
液タブ・ペンタブ(10万円未満)
取得価額が10万円未満のものは、全額をその年の必要経費にできます(No.2100 減価償却のあらまし)。80,000円の液晶ペンタブレットを購入した場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 80,000円 | 普通預金 | 80,000円 |
30万円未満(2026年4月1日以後の取得は40万円未満)のPC(青色申告少額特例)
青色申告者には、取得価額30万円未満(令和8年度税制改正により、2026年4月1日以後に取得した資産は40万円未満)の減価償却資産を、年間合計300万円に達するまで全額その年の必要経費にできる特例があります。280,000円の制作用PCをこの特例で処理する場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 280,000円 | 普通預金 | 280,000円 |
少額特例の上限以上のPC・機材(減価償却)
少額特例の上限以上の機材は固定資産に計上し、耐用年数にわたって減価償却します。パソコン(サーバー用のものを除く)の法定耐用年数は4年です(国税庁の耐用年数表による。No.2100 から確認できます)。1月に480,000円のハイスペックPCを購入して使い始めた場合、購入時は:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 480,000円 | 普通預金 | 480,000円 |
決算時に、定額法で1年分(480,000円 ÷ 4年 = 120,000円)を償却します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 120,000円 | 工具器具備品 | 120,000円 |
年の途中から使い始めた場合の計算など、詳しくは減価償却の計算方法を参照してください。
書籍・美術展などの資料費
デザインの参考書・作品集などの書籍代は新聞図書費で処理するのが一般的です。デザイン年鑑3,300円を購入した場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 新聞図書費 | 3,300円 | 現金 | 3,300円 |
美術展・ギャラリーの入場料も、制作の資料収集など業務との関連が明確であれば経費にできる余地がありますが、私的な鑑賞を兼ねる場合は業務利用の説明が難しくなります。業務上の必要性を説明できるものに限り、判断に迷う場合は税理士・税務署に相談してください。
コワーキングスペース
月額契約のコワーキングスペース利用料は地代家賃(または賃借料)、都度払いのドロップイン利用は雑費や会議費など、利用形態に応じた科目で継続して処理します。月額15,000円の場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 15,000円 | 普通預金 | 15,000円 |
自宅兼事務所の家賃(按分)
自宅で作業している場合、家賃や電気代などの家事関連費は、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限り必要経費にできます(No.2210 やさしい必要経費の知識)。作業スペースの床面積の割合など合理的な基準で按分します。家賃100,000円を事業用40%で按分する場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 40,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
| 事業主貸 | 60,000円 |
按分割合の決め方と根拠の残し方は家事按分の正しいやり方で詳しく解説しています。
記帳の注意点
源泉徴収された税金は確定申告で精算する
源泉徴収はあくまで所得税の前払いです。確定申告で1年分の所得税を計算し、源泉徴収された税額を差し引いて精算します。所得や経費の状況によっては還付になることもあります。入金のたびに「事業主貸」で記帳した源泉税の年間合計を、取引先から届く支払調書や入金記録と突き合わせておくと、申告書に記載する源泉徴収税額の集計漏れに気づけます。詳しくはフリーランスの源泉徴収を参照してください。
事業用口座(屋号口座)を分ける
報酬の入金とサブスク・素材購入などの支払いを事業用の口座に集約しておくと、明細がそのまま帳簿の下書きになり、源泉徴収された入金額と請求額の差額も追いやすくなります。プライベートの口座と混在している場合の処理は事業主借・事業主貸で対応できますが、記帳の手間は増えます。
Webデザイナー・イラストレーター向け勘定科目まとめ
| 取引 | 勘定科目 |
|---|---|
| デザイン・イラスト報酬 | 売上(請求時は売掛金) |
| 源泉徴収された所得税 | 事業主貸 |
| デザインソフトのサブスク | 通信費(または消耗品費) |
| フォント・素材の購入 | 消耗品費 |
| 10万円未満の液タブ・周辺機器 | 消耗品費 |
| 少額特例を使うPC・機材 | 消耗品費 |
| 少額特例の上限以上のPC・機材 | 工具器具備品(減価償却) |
| 書籍・資料 | 新聞図書費 |
| コワーキングスペース(月額) | 地代家賃 |
| 自宅家賃の事業用部分 | 地代家賃(家事按分) |
まとめ
- デザイン・イラストの報酬は所得税法204条1項1号の源泉徴収の対象で、100万円以下の部分は10.21%が差し引かれます
- 源泉徴収された税額は「事業主貸」で記帳し、確定申告で所得税から差し引いて精算します
- 給与を支払っていない個人クライアントからの報酬は源泉徴収されないため、相手によって入金額が変わります
- ソフトのサブスクは通信費など、フォント・素材は消耗品費など、科目を決めたら毎年継続して使います
- PC・液タブは金額に応じて「10万円未満は全額経費」「青色申告の少額特例」「固定資産として減価償却」を使い分けます
- 自宅家賃などの家事関連費は、業務上必要な部分を合理的な基準で按分します
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本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。