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電子帳簿保存法と個人事業主|義務になるのは電子取引データ保存だけ?やり方と要件を解説
「電子帳簿保存法で領収書は全部データ化しないといけないの?」と不安に感じている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。実は、電子帳簿保存法の3つの区分のうち、義務なのは「電子取引データ保存」だけで、残りの2つは任意です。この記事では、個人事業主が最低限やるべきこと(電子取引データ保存のやり方)と、任意で活用できる制度(スキャナ保存・優良な電子帳簿)を整理して解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
電子帳簿保存法の全体像:3つの区分と義務・任意
電子帳簿保存法には次の3つの区分があります(国税庁 電子帳簿保存法の概要)。
| 区分 | 内容 | 義務/任意 |
|---|---|---|
| ① 電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で自分が一貫して作成した帳簿・書類を、紙に印刷せずデータのまま保存する | 任意 |
| ② スキャナ保存 | 紙で受け取った(または紙で作成した)領収書・請求書等を、スキャンやスマホ撮影した画像データで保存する | 任意 |
| ③ 電子取引データ保存 | メール添付の請求書やネット通販の領収書など、データでやり取りした取引情報をデータのまま保存する | 義務 |
①と②は「紙の代わりにデータで保存してもよい」という選択肢を与える制度で、使わなくても問題ありません。会計ソフトで作った帳簿を紙に印刷して保存しても、紙で受け取った領収書をそのまま紙で保存しても、法律上はまったく差し支えありません。
一方、③の電子取引データ保存は、所得税の帳簿書類の保存義務がある事業者に適用されます。青色申告・白色申告を問わず、データで受け取ったり送ったりした請求書・領収書等は、データのまま保存することが義務です。まずはここだけ押さえれば、電子帳簿保存法対応の第一歩としては十分です。
電子取引データ保存のやり方(ここだけは義務)
対象になる取引の例
紙でやり取りしていれば保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当する情報を、データでやり取りした場合が対象です。個人事業主なら、次のようなケースが典型です。
- メール添付(PDF等)で受け取った請求書・領収書
- ネット通販(Amazon・楽天など)のサイトからダウンロードする領収書・購入明細
- クラウドサービスの利用料など、Web上で発行される請求書・領収書
- クラウド請求書サービスを通じて自分が発行した請求書の控え
- スマホアプリ決済で受け取る利用明細
売上・仕入に関するものだけでなく、水道光熱費や旅費交通費など経費に関するデータも対象に含まれます。逆に、紙で受け取った領収書はここでの義務の対象ではありません(紙のまま保存できます)。
保存の3つのルール
電子取引データの保存には、次の3つの要件があります(国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】)。
① 改ざん防止のための措置(真実性の確保)
次のいずれか1つを満たせば足ります。
| 選択肢 | 概要 |
|---|---|
| タイムスタンプが付与されたデータを受け取る | 取引先側の対応に依存 |
| 受け取ったデータにタイムスタンプを付与する | 認定タイムスタンプの利用が必要 |
| 訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除できない)システムで授受・保存する | 対応システム・クラウドサービスの利用 |
| 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する | システム不要。個人事業主向けのサンプルが国税庁サイトにある |
多くの個人事業主にとって現実的なのは最後の「事務処理規程」方式です。国税庁が個人事業者用のひな形(Word)を公開しており、作成して備え付け、そのとおり運用すれば専用システムを導入しなくても要件を満たせます。
② ディスプレイ・プリンタ等の備付け(見読可能性の確保)
保存したデータを画面や書面で確認できるようにしておくことです。パソコンとプリンタがあれば通常は満たせます。
③ 検索できるようにしておくこと(検索要件)
「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる状態で保存します。加えて、日付・金額の範囲指定検索や2項目の組み合わせ検索も原則必要ですが、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、範囲指定・組み合わせ検索の機能は不要です。
検索要件は簡易な方法で満たせる
専用システムがなくても、次のような方法で検索要件を満たせます(一問一答で例示されています)。
- 規則的なファイル名を付ける:「20260810_110000_株式会社◯◯.pdf」のように「日付・金額・取引先」をファイル名に入れ、専用フォルダに集約する
- 索引簿を作る:Excel等で連番・日付・金額・取引先の一覧表を作り、データと対応付ける(国税庁サイトに索引簿の作成例あり)
検索要件が免除される場合
次のいずれかに当てはまる事業者は、データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件そのものが不要になります。
- 基準期間(個人事業主は前々年の1月1日〜12月31日)の売上高が5,000万円以下の場合
- データを印刷した書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理された状態で提示・提出できるようにしている場合
多くの小規模な個人事業主は1に該当するため、実務上は「データを消さずに保存し、求められたら渡せるようにしておく」ことが中心になります。なお、免除されるのは検索要件だけで、改ざん防止措置(①)とデータ自体の保存義務はなくなりません。
対応が間に合わない場合の猶予措置
令和6年1月1日以後の電子取引については、次の両方を満たす場合、検索要件などの保存要件を満たさなくてもデータを保存しておくだけでよいという猶予措置があります。
- 要件に従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認めること(事前の申請・届出は不要。人手不足・システム整備の資金不足・整備が間に合わない等も相当の理由として認められます)
- 税務調査等の際に、データのダウンロードの求めと、データを印刷した書面の提示・提出の求めの両方に応じられるようにしていること
注意したいのは、猶予措置でもデータそのものを消さずに保存しておくことは必須という点です。令和5年までの経過措置と異なり、印刷した紙だけを保存してデータを削除する対応は認められません。自分が猶予措置の対象になるかの判断に迷う場合は、税務署に確認してください。
スキャナ保存は任意:紙の領収書は紙のまま保存でもよい
紙で受け取った領収書・請求書などは、スキャナやスマホで読み取った画像データで保存すること(スキャナ保存)もできますが、これは任意の制度です。やらなくても違法ではなく、紙のままファイリングして保存すれば足ります。
スキャナ保存を行う場合は、主に次のような要件があります(国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイトのパンフレット・一問一答参照)。
- 入力期間の制限:作成・受領後おおむね7営業日以内、または業務処理サイクル(最長2か月)経過後おおむね7営業日以内に読み取る
- 解像度・カラー:200dpi相当以上、24ビットカラーで読み取る(見積書・注文書などの一般書類はグレースケールも可)
- 改ざん防止:入力期間内のタイムスタンプ付与、または訂正・削除の履歴が確認できる(もしくは訂正・削除ができない)システムでの保存等
- 帳簿との相互関連性:契約書・請求書・領収書などの重要書類について、帳簿の記録と対応関係を確認できるようにする
- 検索機能:日付・金額・取引先で検索できるようにする(範囲指定・組み合わせ検索も原則必要ですが、ダウンロードの求めに応じられる場合は不要)
要件を満たして保存すれば、読み取った後の紙の原本は廃棄できます。書類の保管スペースを減らしたい方には有用ですが、要件を継続的に満たす必要があるため、対応ソフトを使うのが一般的です。個別の要件充足の判断は税務署の相談窓口に確認してください。
優良な電子帳簿と65万円控除・過少申告加算税の軽減(任意)
①の電子帳簿等保存のうち、訂正・削除の履歴が残るなど一段高い要件を満たすものを「優良な電子帳簿」といいます。優良な電子帳簿の要件は次の3つです(国税庁 優良な電子帳簿の要件)。
- 訂正・削除の履歴が確認できること
- 帳簿間で記録事項の相互関連性が確認できること
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること(ダウンロードの求めに応じる場合は範囲指定・組み合わせ検索は不要)
優良な電子帳簿には2つのメリットがあります。
- 青色申告特別控除65万円:仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たして保存すれば、e-Taxで申告しなくても65万円控除を受けられます
- 過少申告加算税の5%軽減:対象帳簿を要件を満たして保存していれば、申告漏れがあった場合の過少申告加算税が5%軽減されます
いずれも税務署長の承認は不要で(承認制は令和3年度税制改正前の仕組みです)、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」を提出するだけで適用を受けられます。65万円控除については、適用を受けようとする年分の法定申告期限(翌年3月15日)までの提出が必要です(国税庁 届出手続の案内)。
もっとも、65万円控除だけが目的ならe-Taxでの申告のほうが手軽です。控除額の三段階の仕組みは青色申告特別控除の記事で詳しく解説しています。
なお、令和7年度税制改正で、デジタルインボイスや銀行の決済データを一定の要件を満たして保存する個人事業主向けに、青色申告特別控除を75万円とする制度が新設されています(令和9年分の所得税から適用開始・届出書の提出が必要)。対応システムが前提の制度のため、当面は65万円控除を軸に考えれば十分でしょう。
よくある誤解
「帳簿も領収書も全部電子化しないと違法」ではない
義務なのは、データでやり取りした取引情報(電子取引データ)の保存だけです。帳簿の電子保存もスキャナ保存も任意で、紙での保存を続けても問題ありません。
「電子取引データは印刷して保存すればよい」は令和6年以降は不可
令和5年12月31日までの経過措置では印刷した書面の保存で代替できましたが、令和6年1月1日以後の電子取引は、猶予措置の適用を受ける場合であってもデータそのものの保存が必要です。
「専用システムを導入しないと対応できない」ではない
改ざん防止は事務処理規程の備付け・運用で、検索要件は規則的なファイル名や索引簿で満たせます。会計ソフトや専用システムがなくても対応可能です。
「電子取引データの保存期間は特別」ではない
電子取引データも、紙の請求書・領収書と同様に所得税法上の保存期間が適用されます。保存期間の一覧は帳簿のつけ方の記事を参照してください。
まとめ
- 電子帳簿保存法の3区分のうち、義務は「電子取引データ保存」だけ。電子帳簿等保存・スキャナ保存は任意
- メール添付の請求書やネット通販の領収書などは、データのまま保存する。印刷した紙だけを残す対応は不可
- 改ざん防止は事務処理規程(国税庁のひな形あり)、検索要件は規則的なファイル名や索引簿で、システムなしでも対応できる
- 基準期間(前々年)の売上高5,000万円以下なら、ダウンロードの求めに応じられるようにしておけば検索要件は免除
- 対応が間に合わない場合も、相当の理由があり、データと出力書面の提示等に応じられれば猶予措置がある
- 紙で受け取った領収書は紙のまま保存でよい。スキャナ保存は要件を満たせば原本を廃棄できる任意の制度
- 優良な電子帳簿+届出書で、e-Taxなしの65万円控除や過少申告加算税の5%軽減が受けられる
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本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。