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青色事業専従者給与と専従者控除の違い|配偶者・家族への給与を経費にする方法
配偶者や家族に経理・事務・販売などの仕事を手伝ってもらっている個人事業主は、一定の要件を満たすことでその給与を経費にできます。青色申告では「青色事業専従者給与」、白色申告では「専従者控除」という制度があり、仕組みが大きく異なります。この記事では、それぞれの要件・節税効果・手続きを詳しく解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
個人事業主が家族に給与を払うための原則
原則として、生計を一にする家族(配偶者・子・親など)への給与は経費にできません。これは所得税法上のルールです。しかし、一定の要件を満たした「専従者」への給与・控除については例外的に認められています。
青色事業専従者給与(青色申告の場合)
青色申告をしている個人事業主は、事前に届出をすることで専従者への給与を全額経費にできます。
青色事業専従者の要件
以下の条件をすべて満たす必要があります(国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除)。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者・親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年を通じて6ヶ月を超える期間、専ら事業に従事していること
「専ら従事」とは、原則としてその事業だけに従事することを意味します。他に給与所得のある仕事(パート・アルバイト等)と兼業している場合は、原則として専従者として認められません。
届出書の提出が必須
青色事業専従者給与を経費にするには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければなりません。届出なしに支払った給与は経費になりません。
| 提出先 | 提出期限 |
|---|---|
| 所轄の税務署 | 1月16日以後に開業した年:開業日から2ヶ月以内(1月15日以前の開業はその年の3月15日まで) 2年目以降:給与を支払う年の3月15日まで |
届出書には、専従者の氏名・続柄・給与の金額・支給日などを記載します。届出書に記載した金額の範囲内でのみ経費計上が認められます。給与額を増額・支給方法を変更する場合は、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく税務署に提出してください。
給与額の決め方:「適正額」が重要
給与は届出書に記載した範囲内であれば全額経費になりますが、同じ仕事を他人に依頼した場合の相場(適正額)を著しく超えると否認されるリスクがあります。
適正額を考えるうえでの目安:
- 実際に担当している業務の内容と労働時間
- 同業種・同地域のパートやアルバイトの時給相場
- 売上規模に対して不自然に高額でないか
たとえば経理補助を月20時間担当している場合、時給1,200円×20時間×12ヶ月=年288,000円程度が目安になります。根拠なく月50万円の給与を設定するといった場合は税務調査で問題になる可能性があります。
源泉徴収の義務が発生する
専従者への給与を支払うと、給与所得として源泉徴収が必要になります。毎月の給与支払時に所得税を天引きし、翌月10日(納期の特例を受けている場合は年2回)までに納付します。また、年末には年末調整も行います。
給与が月105,000円未満(社会保険料等控除後・扶養親族等がいない場合)であれば源泉徴収税額はゼロになります(2026年1月改正後の源泉徴収税額表)が、手続き自体は発生するため注意が必要です。
専従者控除(白色申告の場合)
白色申告の場合は届出不要で利用できる「専従者控除」があります。ただし、青色事業専従者と同じく「6ヶ月を超える期間、専ら事業に従事している」という要件は必要です。控除額には上限があります(国税庁 No.2075)。
| 専従者の続柄 | 控除上限額 |
|---|---|
| 配偶者 | 86万円 |
| その他の親族(子・親など) | 50万円 |
また、上記の上限か「事業所得の金額 ÷ (専従者の人数 + 1)」のいずれか低いほうが控除額となります。
計算例:事業所得200万円、配偶者1人が専従者の場合
200万円 ÷ (1 + 1) = 100万円
上限の86万円 < 100万円 → 控除額は86万円青色専従者給与 vs 専従者控除の比較
| 青色事業専従者給与 | 専従者控除(白色) | |
|---|---|---|
| 届出 | 必要(事前に税務署へ) | 不要 |
| 控除・経費の上限 | なし(届出した範囲内・適正額で設定) | 配偶者86万円、その他50万円 |
| 源泉徴収 | 必要 | 不要 |
| 節税効果 | 高い | 低い |
青色申告にすると専従者給与を適正額の範囲で自由に設定できるため、節税効果が大きくなります。
配偶者控除・配偶者特別控除との関係に注意
専従者(青色・白色ともに)にした配偶者は、配偶者控除・配偶者特別控除の対象にはなりません。どちらが節税になるか比較が必要です。
配偶者控除を使う場合(配偶者の給与収入が123万円以下。2025年分以降。国税庁 No.1191 配偶者控除)
- 事業主側で38万円(一般)〜48万円(70歳以上)の所得控除
- 配偶者の給与は経費にならない
青色事業専従者給与にする場合
- 配偶者への給与全額が経費になる(たとえば年120万円)
- 配偶者控除は使えなくなる
専従者給与が配偶者控除の金額を大幅に上回る場合は、専従者給与を選ぶ方が有利です。逆に、仕事の手伝いが軽微で給与額が低くなる場合は配偶者控除の方が有利なこともあります。
また、専従者への給与が年間130万円を超える見込みになると、社会保険の被扶養者の条件を外れる場合があります。その場合は専従者自身が国民健康保険・国民年金に加入する必要があり、その保険料負担も考慮に入れる必要があります。扶養の判定基準は加入している健康保険組合によって異なるため、詳細は確認をおすすめします。
仕訳の例
専従者に月10万円を支払う場合(源泉徴収税額0円の場合):
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 専従者給与 | 100,000円 | 事業主借 | 100,000円 |
源泉徴収が発生する場合(月給15万円、源泉税額5,000円の例):
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 専従者給与 | 150,000円 | 事業主借 | 145,000円 |
| 預り金(源泉税) | 5,000円 |
まとめ
- 生計を一にする家族への給与は原則経費にならないが、専従者制度で例外的に認められる
- 青色申告の専従者給与は適正額の範囲内で全額経費、白色申告の専従者控除は上限あり
- 青色専従者給与には事前の届出が必須(給与支払い前に税務署へ提出)
- 専従者にすると配偶者控除は使えなくなるため、どちらが有利か試算が必要
- 給与が年130万円を超える見込みになると社会保険の被扶養者条件を外れる場合がある(健保組合により異なる)
青色会計では専従者給与の仕訳入力に対応しています。毎月の給与支払いをテンプレートに登録しておくと、入力の手間を省けます。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。