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事業主借・事業主貸の使い方|プライベートと事業のお金が混在した場合の仕訳
個人事業主は法人と異なり、事業用の口座とプライベートの口座を明確に分けていないケースが多くあります。そのような場合に使うのが「事業主借」と「事業主貸」という勘定科目です。この記事では、それぞれの意味・使い方・よくある誤りを実務に即して解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
事業主借・事業主貸とは
どちらも個人事業主特有の勘定科目で、事業とプライベートの間でお金が行き来したときに使います。法人には存在しない概念です。
| 科目 | 意味 | 使うタイミング |
|---|---|---|
| 事業主借 | 事業主(自分)からお金を借りた | プライベートのお金を事業に使ったとき |
| 事業主貸 | 事業主(自分)にお金を貸した | 事業のお金をプライベートに使ったとき |
「借」「貸」が直感に反しやすいですが、**帳簿上の主語は「事業」**です。「事業主借」は事業が事業主からお金を借りた、「事業主貸」は事業が事業主にお金を貸した、と読みます。
事業主借の仕訳例
プライベートの財布から経費を払ったとき
打ち合わせの交通費500円を手持ちの現金(プライベートのお金)で払った場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 500円 | 事業主借 | 500円 |
プライベートの口座から事業用の費用を振り込んだとき
事業用口座の残高が不足していたため、プライベート口座から事業用クラウドサービスの月額料金5,000円を支払った場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 5,000円 | 事業主借 | 5,000円 |
自己資金を事業口座に入金したとき
開業時や資金不足時に、プライベートの貯金100万円を事業口座に振り込んだ場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000円 | 事業主借 | 1,000,000円 |
事業主貸の仕訳例
事業用口座から生活費を引き出したとき
事業用口座からATMで20万円を引き出して生活費に使った場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
事業の売上入金口座から個人の支払いをしたとき
売上が入る口座から、プライベートの保険料30,000円を引き落とした場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
口座を分けていない場合の管理方法
事業用口座とプライベート口座を分けていない場合でも、取引ごとに適切に仕訳することで帳簿は正確に保てます。
実務上のポイント
通帳・明細を定期的に確認する 月に1回以上、口座の入出金明細を確認し、取引ごとに「事業関連か・プライベートか」を仕訳します。
摘要に内容を記録する 仕訳の摘要欄に取引の内容を記録しておくと、後で確認しやすくなります。例:「打合せ交通費(山田商事)」など。
事業口座の分離を強くおすすめする 口座を分けることで管理の手間が大幅に減ります。事業専用の口座・クレジットカードを用意するのが理想的です。
よくある誤り
誤り①:事業主借を「借入金」と混同する
「借」という字から、金融機関からの借入れと混同するケースがあります。事業主借はあくまで自分自身からの資金調達であり、返済義務のある負債とは性質が異なります。
誤り②:生活費を「経費」として計上する
事業口座から生活費を払った際に、経費科目で仕訳してしまうケースがあります。生活費は経費にならないため(国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識)、必ず事業主貸で処理します。
誤り③:売上をプライベート口座で受け取り、仕訳を省く
売上金がプライベート口座に振り込まれた場合も、以下のように仕訳が必要です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 100,000円 | 売上高 | 100,000円 |
売上の記録を省くと、正確な損益が把握できず、税務調査でも問題になります(国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について)。
年末に確認すべきこと
事業主貸・事業主借の残高の意味
決算時点での残高は次のように解釈できます。
- 事業主貸の残高が多い:事業の資金を生活費などに多く使っている状態
- 事業主借の残高が多い:プライベートのお金を事業に多く投入している状態
どちらも年度末に残高を「元入金」に振り替えるのが一般的な処理です。
元入金への振り替え
年度末(12月31日)に事業主借と事業主貸を元入金に振り替えます。
事業主借の残高が30万円、事業主貸の残高が10万円の場合、それぞれ別々に振り替えます。
【仕訳1】事業主借の振り替え
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主借 | 300,000円 | 元入金 | 300,000円 |
【仕訳2】事業主貸の振り替え
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 元入金 | 100,000円 | 事業主貸 | 100,000円 |
この結果、元入金は差し引き20万円(30万円-10万円)増加します。
会計ソフトを使っている場合は、年度更新時に自動で処理されることがほとんどです。
まとめ
- 事業主借:プライベートのお金を事業に使ったとき(貸方に計上)
- 事業主貸:事業のお金をプライベートに使ったとき(借方に計上)
- 生活費の引き出しは事業主貸、自己資金の投入は事業主借
- 口座が混在していても、取引ごとに正確に仕訳すれば帳簿は正確に保てる
- 管理を楽にするために事業用口座・カードの分離を強くおすすめする
青色会計では事業主借・事業主貸を含む仕訳入力に対応しています。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。