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副業の確定申告|20万円ルールと雑所得・事業所得の区分をわかりやすく解説
会社員が副業を始めると、まず気になるのが「確定申告は必要か」です。よく知られた「20万円ルール」は便利な目安ですが、「収入と所得の取り違え」「住民税の見落とし」など、誤解が多いルールでもあります。この記事では、副業の確定申告が必要になる条件、雑所得と事業所得の区分、事業所得として青色申告に進む道筋までを解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
副業の確定申告が必要になる条件|20万円ルールとは
年末調整を受けている会社員(給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる人)は、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要です(国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。
ここでのポイントは、判定対象が「収入」ではなく**「所得」**であることです。
所得 = 収入 − 必要経費たとえば副業の収入が30万円でも、必要経費が12万円かかっていれば所得は18万円となり、20万円以下なので所得税の確定申告義務はありません(このほかに給与以外の所得がない場合)。逆に、収入が20万円ちょうどでも他の副収入と合計して所得が20万円を超えれば申告が必要です。判定は副業1件ごとではなく、給与所得・退職所得以外の所得の合計額で行います。
なお、給与の年間収入が2,000万円を超える人は、副業の金額にかかわらずもともと確定申告が必要です。
20万円ルールの3つの注意点
注意点1:申告不要になるのは「所得税」だけ
20万円ルールで不要になるのは所得税の確定申告だけです。住民税にはこのようなルールがなく、給与以外の所得は金額の多少にかかわらず市区町村への申告が必要とされています(例:芦屋市 給与所得以外の所得が20万円以下の場合、住民税の申告は必要ですか)。
所得税の確定申告をすればその内容は市区町村に共有されるため住民税の申告は不要ですが、「20万円以下だから確定申告をしない」場合は、別途、お住まいの市区町村へ住民税の申告を行うことになります。手続きの詳細は市区町村の窓口・ホームページでご確認ください。
注意点2:還付申告をするなら20万円以下でも全額申告する
医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)などで還付申告をする場合には、20万円以下の副業所得も併せて申告する必要があります。20万円ルールは「確定申告をしなくてよい場合」を定めたものであり、「申告する場合に20万円以下の所得を除外してよい」という意味ではないためです(国税庁 確定申告を要しない場合の意義)。
「医療費控除だけ申告して副業分は書かない」という申告は誤りになるので注意してください。
注意点3:そもそも「申告してはいけない」ルールではない
20万円以下でも、確定申告をすること自体は問題ありません。源泉徴収されている報酬(原稿料など)がある場合は、申告することで税金が還付されることもあります。
副業がアルバイトなど給与の場合
副業がアルバイト・パートなどの給与である場合、20万円ルールの当てはめ方が変わります。給与を2か所以上から受けている人は、**年末調整をされなかった給与の「収入金額」**と、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額との合計額が20万円を超えると確定申告が必要です(前掲 No.1900)。
つまり、業務委託の副業が経費を差し引いた「所得」で判定されるのに対して、副業バイトは経費を引く前の「収入金額(額面)」で判定されるという違いがあります。年末調整は原則1か所(主たる勤務先)でしか受けられないため、副業バイトの給与は通常この「年末調整をされなかった給与」に当たります。
なお、給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下の場合は申告不要という例外もあります。
雑所得と事業所得の区分|帳簿書類の保存が重要な判断要素
副業の所得(業務委託・ネット販売・広告収入など)は、多くの場合雑所得か事業所得のどちらかに区分されます。どちらに当たるかで、青色申告の可否など税務上の扱いが大きく変わります。
区分の基本的な考え方
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上「事業」と称するに至る程度で行っているかどうかで判定されます。そのうえで、令和4年の所得税基本通達の改正(35-2)により、取引を記録した帳簿書類の保存があるかどうかが重要な判断要素として明確化されました(国税庁 所得税基本通達35-2の改正とその解説(PDF))。
国税庁の解説による区分のイメージは次のとおりです。
| 収入金額 | 帳簿の記帳・保存あり | 帳簿の記帳・保存なし |
|---|---|---|
| 300万円超 | 概ね事業所得(※1) | 概ね業務に係る雑所得 |
| 300万円以下 | 概ね事業所得(※1) | 業務に係る雑所得 |
※1 帳簿があっても、収入金額が僅少な場合(例年=概ね3年程度、300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満)や、例年赤字でかつ赤字を解消する取組をしていない場合などは、事業と認められるかどうかを個別に判断するとされています。
つまり、帳簿を付けずに行っている収入300万円以下の副業は、原則として雑所得に区分されます。帳簿の保存がない場合でも、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実があるときは事業所得と取り扱われますが、これは例外的な位置付けです。
「帳簿を付ければ必ず事業所得」ではない
注意したいのは、帳簿の保存は判断要素の一つであって、帳簿さえあれば自動的に事業所得になるわけではないことです。最終的には営利性・継続性・企画遂行性などを社会通念に照らして総合的に判定します。自分の副業がどちらに当たるか迷う場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
雑所得で申告する場合のやり方
副業が雑所得(業務に係る雑所得)の場合、確定申告では次のように所得を計算します。
業務に係る雑所得 = 総収入金額 − 必要経費具体的には、次の手順で準備します。
- 収入を集計する:原則として、入金日ではなくその年に取引が確定した報酬・売上を集計します。支払調書や取引アプリの売上履歴、銀行明細などを整理しましょう
- 必要経費を集計する:その収入を得るために直接かかった費用(仕入、通信費、消耗品費など)を集計します。プライベートと共用の費用は、事業利用分だけを合理的に按分します
- 確定申告書に記載する:確定申告書の「雑所得(業務)」の欄に収入金額と所得金額を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って入力できます
雑所得には事業所得のような記帳義務はありませんが、前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、取引に関する書類(請求書・領収書など)の保存が義務付けられています(前掲の通達解説参照)。また、前述のとおり帳簿の記帳・保存は所得区分の判断要素にもなるため、雑所得の段階から収支の記録を残しておくことには意味があります。
確定申告全体の流れは「個人事業主の確定申告のやり方」も参考にしてください。
事業所得として青色申告する道
副業の規模が大きくなってきたら、事業所得として申告し、青色申告の特典を受けるという選択肢があります。
青色申告できるのは事業所得・不動産所得・山林所得のみ
青色申告をすることができるのは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人に限られます(国税庁 No.2070 青色申告制度)。**雑所得のままでは青色申告はできません。**つまり「副業を青色申告で節税」するには、その副業が事業所得と認められることが前提になります。
必要な手続き
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書):事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出します(国税庁 個人事業の開業届出・廃業届出等手続)
- 青色申告承認申請書:青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新規開業した場合は、業務を開始した日から2か月以内)に提出します(前掲 No.2070)
手続きの詳細は「開業届と青色申告承認申請書の出し方」で解説しています。
青色申告の主なメリット
- 青色申告特別控除:複式簿記での記帳と e-Tax 申告(または優良な電子帳簿保存)で最高65万円を所得から控除できます(詳細は「青色申告特別控除10万・55万・65万円の違い」)
- 純損失の繰越控除:事業の赤字を翌年以後3年間繰り越して所得から控除できます
- そのほかの違いは「青色申告と白色申告の違い」を参照してください
ただし、開業届を出したからといって事業所得になるわけではなく、所得区分はあくまで活動の実態で判断されます。副業を事業所得として申告できるかどうかは前述の判断要素に照らして検討し、迷う場合は税務署・税理士に相談してください。
会社に副業を知られたくない場合の一般論
就業規則で副業が制限されている会社もあるため、まずは勤務先のルールを確認するのが大前提です。そのうえで、一般に知られている点として、確定申告書第二表には「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」を選択する欄があり、「自分で納付」(普通徴収)を選ぶと、副業分の住民税を給与天引きとは別に自分で納付するよう申し出ることができます(例:富士市 給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法について)。
ただし、この欄で選択できるのは給与以外の所得に係る分だけで、副業がアルバイトなど給与の場合は対象外です(複数の給与に係る住民税は主たる給与からの特別徴収に合算されるのが原則です)。また、実際の取扱いは市区町村の運用によります。確実に会社に知られない方法を保証するものではない点にご注意ください。
まとめ
- 年末調整済みの会社員は、給与以外の所得(収入−経費)の合計が20万円を超えると所得税の確定申告が必要
- 20万円以下で確定申告をしない場合も、住民税の申告は別途必要
- 医療費控除などの還付申告をする場合は、20万円以下の副業所得も併せて申告する
- 副業がアルバイト(給与)の場合は、年末調整されなかった給与の収入金額で判定される
- 帳簿の記帳・保存がない収入300万円以下の副業は原則として雑所得。青色申告できるのは事業所得・不動産所得・山林所得のみ
- 事業所得として青色申告する場合は、開業届と青色申告承認申請書を提出し、複式簿記で記帳する
副業の収支記録から複式簿記への移行まで、青色会計を使えば簿記の知識がなくても日々の取引を記録し、青色申告の準備を進められます。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。