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個人事業主の税務調査|事前通知から当日の流れ・日頃の備えまで

「税務調査」という言葉は聞いたことがあっても、実際に何が行われるのかを知る機会は多くありません。この記事では、個人事業主を対象とした税務調査について、事前通知の仕組み、当日の一般的な流れ、何年分の帳簿・書類を確認されるのか、指摘があった場合の税金(加算税・延滞税)、そして日頃からできる備えを、国税庁の公表資料と国税通則法に基づいて解説します。

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。

税務調査とは|任意調査が基本

所得税は、納税者が自ら所得と税額を計算して申告する「申告納税制度」を採っています。税務調査は、その申告内容が正しいかどうかを税務署等が確認する手続きで、個人事業主の場合は事業所への訪問による「実地の調査」が代表的です。

一般に個人事業主が受ける税務調査は、査察(強制調査)とは異なり、納税者の理解と協力の下で行われる、いわゆる任意調査です。国税庁は、調査を「社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の方の理解と協力を得て行うもの」と位置付けています(国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け))。

ただし「任意」といっても、調査担当者には法律上の質問検査権があり、正当な理由なく帳簿書類等の提示・提出を拒んだり、虚偽の帳簿書類等を提示・提出した場合の罰則も定められています。実務上は、求められた帳簿・書類を淡々と提示して協力するのが基本です。

なお、税務署から電話で申告内容の確認や見直しの依頼が来る場合があります。これは調査ではなく行政指導として行われることがあり、行政指導を受けて自主的に修正申告をした場合には過少申告加算税はかかりません(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%かかります)。税務署の担当者は、調査と行政指導のどちらに当たるのかを納税者に明示することとされています。

事前通知|調査の前に知らされる事項

実地の調査を行う場合、税務署は原則として、調査開始前に納税者へ事前通知を行います。通知される事項は国税通則法第74条の9に定められており、実地の調査を行う旨のほか、次の内容が含まれます。

事前通知される事項
調査を開始する日時
調査を行う場所
調査の目的
調査の対象となる税目
調査の対象となる期間
調査の対象となる帳簿書類その他の物件
その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

事前通知は原則として電話で行われます。通知された日時・場所について、業務上やむを得ない事情など合理的な理由を付して変更を求めた場合には、税務署は協議に努めることとされています(同条第2項)。

一方で、申告内容や事業内容などから、事前通知をすると「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」等があると判断された場合には、事前通知なしに調査が行われることもあります国税庁FAQ 問20)。この場合でも、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などは、調査開始後速やかに説明される運用とされています。

なお、税務代理を依頼している税理士がいる場合、納税者の同意があれば、事前通知はその税理士に対して行えば足りることとされています。

調査当日の一般的な流れ

調査当日に行われるのは、法律上は「質問検査等」、つまり調査担当者による質問と、帳簿書類その他の物件の検査・提示・提出の求めです。一般的には、事業の内容や記帳の方法について質問を受けながら、帳簿と証憑(請求書・領収書など)を突き合わせて確認が進みます。

国税庁FAQでは、当日の対応について次のような取り扱いが示されています。

  • 帳簿や書類が会計ソフトなどの電子データである場合は、画面上で内容を確認できる状態にして提示するか、プリントアウトや電子データの形で提出する
  • 帳簿書類が多量な場合など、調査担当者が帳簿書類等の**預かり(留置き)**を求めることがある。預かりは納税者の承諾を得て行われ、必要がなくなれば返還される
  • 通知された対象期間の申告内容を確認するために必要な場合は、対象期間より前の帳簿書類の提示を求められることがある
  • 調査の過程で他の税目・期間に誤りが疑われた場合には、説明の上で調査の対象が追加されることがある

調査が1日で終わらない場合は、納税者の都合を確認した上で次回以降の日程が調整されます。

税務調査は何年分を見られるのか|保存期間との関係

「何年分の帳簿を用意すればよいか」は、まず事前通知で示される調査対象期間によって決まります。その上で、制度上の上限として、税務署が申告内容を増額修正する処分(更正・決定)を行えるのは原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年までと定められています(国税通則法第70条)。

これに対応して、帳簿・書類には次の保存期間が定められています(青色申告の場合。国税庁 記帳や帳簿等保存・青色申告)。

保存が必要なもの保存期間
帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など)7年
決算関係書類(損益計算書・貸借対照表・棚卸表など)7年
現金預金取引等関係書類(領収証・預金通帳など)7年(前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は5年)
その他の書類(請求書・見積書・契約書・納品書など)5年

白色申告でも、収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)は7年、その他の帳簿・書類は5年の保存が必要です。保存期間内の帳簿・書類はいつでも提示できる状態で保管しておきましょう。帳簿の種類と記帳方法の基本は「帳簿のつけ方」で解説しています。

指摘があった場合|修正申告・更正と加算税・延滞税

調査の結果は、おおむね次のいずれかに落ち着きます(国税庁FAQ 4. 調査終了の際の手続)。

  1. 誤りが認められなかった場合:「更正決定等をすべきと認められない」旨が書面で通知されます(いわゆる申告是認)
  2. 誤り(非違)があった場合:調査担当者から内容の説明があり、原則として修正申告(無申告の場合は期限後申告)が勧奨されます。勧奨に応じるかどうかは納税者の任意ですが、修正申告をすると不服申立てはできなくなります(更正の請求は可能です)
  3. 勧奨に応じない場合:税務署が更正等の処分を行います。処分には理由が付記され、納得できない場合は不服申立てができます

追加で納める税額が生じた場合には、本税に加えて次の加算税・延滞税がかかります。

種類課される場合割合
過少申告加算税申告した税額が少なかった場合追加本税の10%(当初の申告納税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)
無申告加算税期限内に申告しなかった場合納付すべき税額の50万円までの部分は15%、50万円超300万円までの部分は20%、300万円超の部分は30%
重加算税事実の隠蔽・仮装があった場合過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%
延滞税法定納期限より納付が遅れた場合2026年中は年2.8%(納期限の翌日から2か月以内)、年9.1%(2か月経過後)。法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算
  • 過少申告加算税は、調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合にはかかりません。事前通知後・更正の予知前の修正申告では5%(上記の超過部分は10%)に軽減されます(国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
  • 無申告加算税は、調査の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合は5%に軽減されます。上記の税率は令和5年分以降のもので、繰り返しの無申告等に対する加重措置もあります(国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
  • 重加算税の割合は国税通則法第68条の定めによるもので、一定の場合にはさらに10%加重されます
  • 延滞税の割合は年により変わります(国税庁 No.9205 延滞税について)。延滞税は本税のみを対象とし、加算税には課されません

また、令和5年分以降の申告については、調査で帳簿の提示・提出を求められた際に帳簿を提示できなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が本来の2分の1未満だった場合には過少申告加算税・無申告加算税が10%、3分の2未満だった場合には5%加重される措置が設けられています(国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について)。帳簿をきちんと作成・保存していること自体が、負担を増やさないための前提条件になっています。

日頃の備え|正確な帳簿と根拠の保存

税務調査を確実に避ける方法はなく、自分に調査が来るかどうかを前もって予測することもできません。できる備えは、いつ調査があっても説明できる状態を日頃から保っておくことに尽きます。特別な対策ではなく、次のような基本の積み重ねです。

  • 記帳を継続する:取引の都度証憑を保管し、定期的に記帳して帳簿と預金残高の照合まで行っておきます。記帳の進め方は「帳簿のつけ方」を参照してください
  • 証憑を保存期間どおり保存する:請求書・領収書・通帳などを帳簿と対応付けて整理し、求められたら提示できる状態にしておきます
  • 家事按分の根拠を残す:家賃や通信費を按分している場合、按分割合の設定根拠(面積・時間の記録など)を説明できるようにしておきます。詳しくは「家事按分の正しいやり方」で解説しています
  • 青色申告の要件を確認しておく:帳簿の備え付けや保存は青色申告の前提でもあります。「青色申告のチェックリスト」もあわせてご覧ください

摘要欄への記録や証憑の整理は、調査のためだけの作業ではなく、日々の経理の正確さをそのまま調査対応力に変えるものです。

税理士への相談という選択肢

税務調査への対応は自分だけで行う必要はありません。税務代理を依頼した税理士(税務代理人)がいる場合、次のことが制度上認められています。

  • 納税者の同意があれば、事前通知を税理士に対して行ってもらう
  • 調査当日に税理士に立ち会ってもらい、納税者に代わって調査についての主張・陳述をしてもらう(税務代理行為は原則として税理士のみが行えます)
  • 納税者の同意があれば、調査結果の説明を税理士に対して行ってもらう

調査の連絡を受けた段階で顧問税理士に相談する、顧問契約がない場合も調査対応を依頼できる税理士を探す、という選択肢があることは知っておいて損はありません。

まとめ

  • 個人事業主の税務調査は、納税者の理解と協力の下で行われる任意調査が基本で、原則として事前通知がある
  • 事前通知では調査の日時・場所・目的・税目・対象期間などが知らされ、日時・場所は合理的な理由があれば変更を協議できる
  • 調査対象期間は事前通知で示され、更正・決定は原則5年(偽りその他不正の行為があった場合は7年)が上限。帳簿は7年、書類は5〜7年の保存義務に対応して保管しておく
  • 指摘があった場合は修正申告の勧奨または更正となり、過少申告加算税(10〜15%)・無申告加算税(15〜30%)・重加算税(35%・40%)・延滞税がかかり得る
  • 特別な調査対策よりも、正確な記帳の継続と証憑・根拠の保存が日頃の備えのすべてであり、税理士に立会いを依頼する選択肢もある

日々の記帳を続けやすくすることが、結果として税務調査への一番の備えになります。青色会計は仕訳入力から帳簿の作成・保存、青色申告決算書の出力までを個人事業主向けに提供しています。


本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。

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