Skip to content

個人事業主の消費税とインボイス制度の基本|免税・課税・登録の判断

2023年10月にインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まり、フリーランス・個人事業主にとって消費税の取り扱いが以前より重要になりました。この記事では消費税の基本的な仕組みから、インボイス登録の判断基準までを整理します。

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています(令和8年度税制改正を反映)。

消費税の基本的な仕組み

消費税は最終的に消費者が負担する税金ですが、事業者がその徴収と納付を担います。

取引の流れ

  1. 事業者Aがクライアントから報酬110,000円(税込)を受け取る
  2. うち10,000円が消費税として預かった状態になる
  3. 事業者Aは自分が支払った仕入れの消費税と相殺して、差額を国に納付する

この「預かった消費税」と「支払った消費税」の差額を納める仕組みを仕入税額控除といいます。

免税事業者と課税事業者

個人事業主の場合、前々年(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の申告・納付が免除される免税事業者になります(国税庁タックスアンサー No.6501 納税義務の免除)。

免税事業者課税事業者
消費税の納付不要必要
消費税の申告不要必要
インボイス発行不可登録すれば可能
帳簿の消費税区分不要(税込で処理)必要

開業1・2年目は原則として免税事業者です(前々年の売上がないため)。

インボイス制度とは

インボイス(適格請求書)とは、売り手が買い手に交付する一定の記載事項を満たした請求書です。2023年10月以降、買い手(クライアント側)が仕入税額控除を受けるためには、売り手がインボイス登録事業者(適格請求書発行事業者)でなければなりません。

インボイスを発行するには税務署に登録申請を行い、**登録番号(T+13桁)**を取得する必要があります。インボイス登録をすると自動的に課税事業者になります。

インボイス登録をすべきか

登録すべきかどうかは、主に取引先の状況によって判断します。

登録した方がよい場合

取引先が法人・課税事業者の場合

クライアントが法人や課税事業者の場合、あなたがインボイスを発行できないと、クライアントは支払った消費税の控除ができません。その分の負担をクライアントが嫌がり、取引条件の変更(消費税分の値引き要求など)や取引の打ち切りにつながる可能性があります。

BtoB取引が中心のフリーランス(システム開発、デザイン、コンサルティングなど)は、インボイス登録を検討する必要があります。

登録しなくてよい場合が多い

取引先が一般消費者・免税事業者の場合

取引相手が一般消費者や免税事業者の場合、インボイスの有無は仕入税額控除に影響しません。BtoC取引が中心のフリーランス(ハンドメイド販売、個人向けレッスン、一般向けコンテンツ販売など)は、登録の優先度が低いです。

登録した場合の消費税の計算

課税事業者になると、原則として年に1回(または数回)消費税の申告・納付が必要になります。計算方式は2種類あります。

原則課税

預かった消費税(売上の消費税)から支払った消費税(仕入れ・経費の消費税)を差し引いた金額を納付します。

納付額 = 受け取った消費税 − 支払った消費税

経費が多い事業者に有利です。

簡易課税

売上の消費税にみなし仕入率をかけて納付額を計算します(国税庁タックスアンサー No.6505 簡易課税制度)。実際の仕入れ消費税の集計が不要で計算が簡単です。前々年の課税売上高が5,000万円以下であれば選択できますが、適用を受けるには**「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用を受けようとする課税期間の前の課税期間末日まで**に税務署へ提出する必要があります(事業を開始した課税期間については、その課税期間中に提出すれば適用可)。

事業区分みなし仕入率該当する事業の例
第1種90%卸売業
第2種80%小売業
第3種70%製造業・建設業
第4種60%飲食業・その他
第5種50%サービス業(多くのフリーランス)
第6種40%不動産業

多くのフリーランス(エンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタントなど)は第5種(みなし仕入率50%)に該当します。

簡易課税の計算例(売上1,100万円・税込の場合)

消費税額(売上分)= 1,100万円 × 10/110 = 100万円
みなし仕入税額  = 100万円 × 50%     = 50万円
納付消費税額    = 100万円 − 50万円   = 50万円

帳簿の記帳への影響

免税事業者の場合(税込処理)

消費税を区分せず、受け取った金額をそのまま売上高に計上します。

借方金額貸方金額
普通預金110,000円売上高110,000円

課税事業者の場合(税抜処理)

消費税を「仮受消費税」「仮払消費税」として区分して記録します。

売上時

借方金額貸方金額
売掛金110,000円売上高100,000円
仮受消費税10,000円

経費支払い時

借方金額貸方金額
通信費5,000円普通預金5,500円
仮払消費税500円

インボイス制度に関する経過措置

2割特例(個人は2026年分まで)

免税事業者からインボイス登録事業者になった個人事業主には、2割特例という経過措置があります(国税庁:2割特例)。対象は2023年10月1日〜2026年9月30日の属する各課税期間で、本来の消費税計算に代えて売上の消費税額の20%を納付税額とすることができます。個人事業主は課税期間が暦年のため、2026年分(2026年12月31日まで)の申告が最後です。

計算が非常にシンプルになります(売上1,100万円・税込の場合):

消費税額(売上分)= 1,100万円 × 10/110 = 100万円
納付額(2割特例) = 100万円 × 20%     = 20万円

簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)では納付額50万円になるため、2割特例の方が有利です。届出不要で、確定申告時に適用を選択できます。

また令和8年度税制改正により、2割特例に続く経過措置として3割特例が創設されました。免税事業者からインボイス登録で課税事業者になった個人事業主は、**2027年分(令和9年分)・2028年分(令和10年分)の納付税額を売上の消費税額の30%**にできます(基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること等の条件があります。届出不要で、確定申告時に選択できます)。

免税事業者との取引に関する経過措置

インボイス未登録の免税事業者への支払いについて、クライアント側(買い手)が仕入税額控除できる割合は段階的に縮小されます(令和8年度税制改正後のスケジュール。国税庁:インボイス制度に関する改正について)。

期間控除できる割合
2023年10月1日〜2026年9月30日支払消費税の80%
2026年10月1日〜2028年9月30日支払消費税の70%
2028年10月1日〜2030年9月30日支払消費税の50%
2030年10月1日〜2031年9月30日支払消費税の30%
2031年10月1日以降控除不可(0%)

免税事業者のフリーランスと取引するクライアントはこの影響を受けるため、BtoB取引が中心の場合はインボイス登録を求められる可能性が高まります。

まとめ

  • 前々年の売上1,000万円以下なら原則免税事業者
  • インボイス登録が必要かどうかは取引先が法人・課税事業者かどうかで判断
  • 登録すると課税事業者になり、消費税の申告・納付が必要になる
  • 売上5,000万円以下なら簡易課税を選択して計算を簡素化できる
  • インボイス登録した免税事業者は2割特例(個人は2026年分まで)が使える。2027・2028年分は3割特例を選択できる
  • 免税事業者との取引の経過措置は段階的に縮小され、2031年10月以降は控除できなくなります

インボイス登録の判断は事業の状況によって異なります。迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。


本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。

青色申告を、もっとかんたんに。

青色会計は個人事業主向けのクラウド会計サービスです。複式簿記での記帳から青色申告決算書の作成まで、無料で始められます。

青色会計を見てみる →