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棚卸表の作り方|個人事業主の期末棚卸のやり方と記載項目を解説

在庫のある事業(物販・製造・飲食など)を営む個人事業主は、年末に在庫を数えて「棚卸表」を作成する必要があります。この記事では、期末棚卸のやり方を「数える → 単価を決める → 棚卸表にまとめる」の3ステップで解説し、棚卸表に記載すべき項目と記入例、決算での仕訳、保存期間までを国税庁の一次情報に基づいてまとめます。

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。

棚卸とは|棚卸をしないと利益が確定しない

棚卸(たなおろし)とは、年末時点で手元に残っている商品などの在庫を実際に数え、その金額(棚卸高)を確定させる作業です。なぜ必要かというと、仕入代金は仕入れた年にそのまま全額が経費になるのではなく、売れた分だけが売上原価として必要経費になるためです。売上原価は次の式で計算します(青色申告の決算の手引き)。

売上原価 = 年初(期首)の棚卸高 + 年間の仕入高 − 年末(期末)の棚卸高

この式の「期末の棚卸高」が分からなければ、売上原価が計算できず、その年の利益(所得)も確定しません。つまり棚卸は、在庫のある事業の決算の出発点です。そして、数えた結果をまとめた一覧表が棚卸表であり、期末棚卸高の根拠資料になります。

棚卸の対象は、店頭や倉庫の商品だけではありません。決算の手引きでは、次の資産が棚卸の対象として挙げられています。

  • 商品など … 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、副産物、仕損じ品、作業くずなど
  • 消耗品など … まだ使用していない包装材料、ガソリン、事務用品などの消耗品や、使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の少額な減価償却資産

未使用の消耗品の年末棚卸高は、その年の必要経費にはなりません。ただし、通常の年に比べて特に増えていない消耗品などについては、棚卸しを省略しても差し支えないとされています。

期末棚卸のやり方|3ステップ

ステップ1:12月31日に在庫を数える(実地棚卸)

個人事業主の棚卸は、12月31日に行います(個人の事業年度は暦年のため)。商品や消耗品などの種類、品質、型などの別に、その数量を実際に調べます。これを実地棚卸といいます。

決算の手引きでは、次の柔軟な取り扱いも示されています。

  • 多忙のため年末に棚卸しができない場合には、年末から多少前後した日に棚卸しをしても差し支えありません。その場合は、12月31日と棚卸日の間の売上げ・仕入れなどから12月31日現在の棚卸高を計算し、その計算方法を明らかにしておく必要があります
  • 商品出入帳などを設けて毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地棚卸しをしてその正否を確かめている場合は、商品出入帳などを基に年末の棚卸高を計算することで、年末の実地棚卸しを省略できます

数量を記録したメモなどの原始記録は、後で作成する棚卸表と一緒に保存しておきます。日頃から仕入と在庫を記録しておくと、年末に数えた結果との照合が楽になります。姉妹サービスの青色在庫のような、仕入と在庫を記録して棚卸と仕訳連携ができる無料サービスを使うのも一つの方法です。

ステップ2:単価を決める(最終仕入原価法)

数えた在庫に単価を掛けて金額を計算します。棚卸資産の評価方法には先入先出法や総平均法、売価還元法、低価法などがあり、あらかじめ税務署へ届け出た方法で評価しますが、届出により選択をしなかった場合は最終仕入原価法が適用されます。多くの個人事業主は届出をしていないため、最終仕入原価法で計算することになります。

年末に一番近い時期に仕入れたその棚卸資産の仕入単価 × 年末の棚卸資産の数量 = 年末の棚卸高

たとえば、ある商品を年内に何度か仕入れ、最後(12月15日)の仕入単価が800円だった場合、年末の在庫が20個なら、その商品の棚卸高は 800円 × 20個 = 16,000円 です。途中の仕入単価が違っていても、最後の仕入単価だけで計算できるのがこの方法の特長です。

ステップ3:棚卸表にまとめる

品目ごとの数量・単価・金額を一覧表にまとめれば、棚卸表の完成です。全品目の金額を合計したものが「期末棚卸高」となり、青色申告決算書の記入や決算仕訳に使います。

棚卸表の項目と記入例

棚卸表は確定申告の際に税務署へ提出する書類ではなく、自分で作成して手元に保存しておく書類です。決まった様式はないため、ノートや表計算ソフトなど形式は自由です。一般的には、次の項目が分かるように作成します。

  • 作成日(棚卸日) … 「2026年12月31日現在」など
  • 品名 … 種類・品質・型などの別に区分
  • 数量
  • 単価 … 評価方法(最終仕入原価法など)に基づく単価
  • 金額 … 数量 × 単価
  • 合計額 … これが期末棚卸高

記入例は次のとおりです。

棚卸表(2026年12月31日現在)

品名数量単価金額備考
Tシャツ(白・M)20枚800円16,000円最終仕入 12/15
スマホケース(A型)15個300円4,500円最終仕入 11/28
ワイヤレスイヤホン B5個2,400円12,000円最終仕入 12/20
合計32,500円

合計の32,500円が期末棚卸高です。この例で、期首棚卸高が48,000円・年間の仕入高が520,000円だった場合、売上原価は 48,000円 + 520,000円 − 32,500円 = 535,500円 となります。

期末・期首の仕訳

棚卸表がまとまったら、決算整理仕訳で帳簿に反映します。年初の在庫を期首商品棚卸高へ振り替え、年末の在庫(棚卸表の合計額)を期末商品棚卸高として計上します。上の例では次のようになります。

借方金額貸方金額
期首商品棚卸高48,000円商品48,000円
借方金額貸方金額
商品32,500円期末商品棚卸高32,500円

期末棚卸高32,500円は貸借対照表の「商品」として翌年に繰り越され、翌年の決算で期首商品棚卸高へ振り替えます。棚卸を含む物販の一連の仕訳例は物販・せどりの仕訳例で、棚卸高が青色申告決算書のどこに載るかは青色申告決算書の書き方で詳しく解説しています。帳簿づけ全般の基本は帳簿のつけ方を参考にしてください。

棚卸表の保存期間とよくある疑問

保存期間は青色申告で7年

棚卸表は、損益計算書・貸借対照表と並ぶ「決算関係書類」として、青色申告では7年間保存する必要があります(帳簿の記帳のしかた(事業所得者用))。白色申告の場合、決算に関して作成した棚卸表その他の書類の保存期間は5年間です。実地棚卸のときに数量を記録したメモなどの原始記録も、棚卸表と一緒に保存しておきます。

在庫がゼロでも棚卸表は必要か

年末にたまたま在庫を売り切ってゼロだった場合でも、「期末棚卸高がゼロである」こと自体が売上原価の計算の前提になります。棚卸を行った上で、在庫ゼロと分かる記録(合計0円の棚卸表など)を残しておくと、決算の根拠を後から示せます。なお、サービス業などでそもそも棚卸資産を持たない事業であれば、棚卸表の作成は問題になりません。

破損品・売れ残り品はどう評価するか

決算の手引きでは、災害により著しく損傷を受けたり、棚ざらしや流行遅れなどで著しく陳腐化したなどのため、通常の販売価額では販売できないものや通常の方法では使用に耐えないものについては、他の棚卸資産と区別して12月31日現在の処分可能価額で評価することもできるとされています。ただし「著しく」に当たるかどうかは状況によって判断が分かれる論点のため、適用を検討する場合は税理士や税務署に相談することをおすすめします。

まとめ

  • 棚卸は期末棚卸高を確定させる作業で、これがないと売上原価と利益が計算できません
  • 期末棚卸は「12月31日に数える → 単価を決める → 棚卸表にまとめる」の3ステップです
  • 評価方法の届出をしていなければ、最終仕入原価法(年末に一番近い仕入単価 × 数量)で評価します
  • 棚卸表に決まった様式はなく、品名・数量・単価・金額と合計額が分かるように作成します
  • 棚卸表は決算関係書類として青色申告で7年間保存し、数量メモなどの原始記録も一緒に残します

青色会計では、期首・期末の棚卸の決算整理仕訳もかんたんに登録でき、AIが仕訳の勘定科目を提案します。棚卸表の合計額が出たら、そのまま決算の記帳まで進められます。


本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。

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