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青色申告特別控除10万・55万・65万円の違いと選び方
青色申告特別控除は10万円・55万円・65万円の三段階があります。どれが適用されるかは記帳方法と申告方法によって決まり、控除額の差は節税効果に大きく影響します。この記事では、それぞれの要件・節税効果・手続きを整理し、どれを選ぶべきかを解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。
三段階の控除額と要件の概要
令和2年(2020年)分の確定申告から現在の三段階制が適用されています(国税庁 No.2072 青色申告特別控除)。
| 控除額 | 記帳方式 | 申告方法 | e-Tax・電子帳簿 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 簡易簿記(現金主義も可) | 紙・e-Taxどちらでも可 | 不要 |
| 55万円 | 複式簿記 | 紙・e-Taxどちらでも可 | 不要 |
| 65万円 | 複式簿記 | e-Taxによる電子申告、または優良な電子帳簿の保存 | どちらか必要 |
55万円と65万円の違いはe-Tax申告または電子帳簿保存を行うかどうかだけです。複式簿記で記帳しているにもかかわらず紙で申告していると、65万円ではなく55万円の控除にとどまります。
10万円控除:簡易簿記でOK
要件
- 青色申告の承認を受けていること(開業時に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります)
- 簡易簿記(収支を一方向で記録する方式)による記帳
- 確定申告書に損益計算書を添付すること(貸借対照表は不要)
特徴と注意点
10万円控除は記帳の負担が最も少ない選択肢です。ただし、青色申告の他のメリット(純損失の繰越控除・専従者給与など)は引き続き利用できます。
簡易簿記では貸借対照表が作成できないため、事業の財務状況が把握しにくいという実務上のデメリットもあります。
55万円控除:複式簿記で紙申告
要件
- 事業所得または不動産所得(不動産所得は事業的規模であることが必要です)がある青色申告者であること
- 複式簿記による記帳を行うこと
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すること
- 法定申告期限内に申告すること
特徴と注意点
複式簿記で正確に記帳しながらも、e-Taxを使わず紙で申告する場合に適用されます。令和2年の改正前は、この要件で65万円控除が受けられましたが、現在は55万円にとどまります。
すでに複式簿記で記帳しているなら、e-Tax申告に切り替えるだけで65万円控除が受けられます。必要な準備はマイナンバーカードの取得とe-Taxの初期設定のみです。
65万円控除:複式簿記+e-Taxまたは電子帳簿
要件
55万円控除の要件に加えて、以下のいずれかを満たすことが必要です。
① e-Taxによる電子申告
国税庁の「e-Tax」を使って確定申告書を電子送信する方法です。マイナンバーカード(ICカードリーダーまたはスマートフォン)で申告できます(ID・パスワード方式は令和7年10月に新規発行が停止され、今後はマイナンバーカード方式が基本です)。
② 優良な電子帳簿の保存
電子帳簿保存法の要件を満たす「優良な電子帳簿」の形式で帳簿を保存する方法です。訂正・削除の履歴が残る形式での保存、検索機能の確保など対応ソフトウェアの要件があります。また、この方法で65万円控除を受けるには「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の軽減措置の適用を受ける旨の届出書」を、その年分の確定申告期限までに税務署へ提出する必要があります(国税庁:届出手続の案内)。準備の手間を考えると、一般的にはe-Tax申告の方がはるかに手軽です。
e-Tax申告の流れ
e-Tax申告は国税庁の確定申告書等作成コーナーから行えます。
- マイナンバーカードを準備する(スマートフォンのマイナポータルアプリでも可)
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセスする
- 会計ソフトから書き出したデータまたは手入力で申告書を作成する
- 電子署名をして送信する
節税効果の比較
青色申告特別控除は所得から直接差し引かれるため、所得税率が高いほど節税効果が大きくなります(税率の区分は国税庁 No.2260 所得税の税率を参照)。
控除額ごとの節税額の目安
事業所得300万円・各種控除後の課税所得が所得税率10%の区分に収まると仮定した場合の概算(復興特別所得税除く):
| 控除額 | 課税所得の減少 | 所得税の節税額 | 住民税の節税額(10%) | 合計節税額 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 10万円 | 約1万円 | 約1万円 | 約2万円 |
| 55万円 | 55万円 | 約5.5万円 | 約5.5万円 | 約11万円 |
| 65万円 | 65万円 | 約6.5万円 | 約6.5万円 | 約13万円 |
10万円控除と65万円控除の差は年間約11万円の節税効果になります。e-Tax申告の手間は年1回数時間程度であることを考えると、65万円控除を目指す価値は十分あります。
所得税率別の節税効果(65万円控除の場合)
| 課税所得 | 所得税率 | 65万円控除による節税額(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 〜195万円 | 5% | 約9.75万円 |
| 〜330万円 | 10% | 約13万円 |
| 〜695万円 | 20% | 約19.5万円 |
| 〜900万円 | 23% | 約21.45万円 |
所得が高くなるほど65万円控除の恩恵は大きくなります。
どれを選ぶべきか
10万円控除が現実的なケース
- 帳簿の記帳経験がなく、複式簿記の学習コストをかけたくない
- 売上が少なく、節税効果の絶対額が小さい
- 事業所得以外の所得が主体(不動産所得のみで規模が小さいなど)
65万円控除を目指すべきケース
- 事業所得がある程度あり、節税効果が大きい
- 会計ソフトを使っており、複式簿記の記帳負担が少ない
- マイナンバーカードを持っており、e-Tax申告の準備が整っている
複式簿記で記帳していてe-Tax申告の準備もできるなら、65万円控除を選ぶのが合理的です。55万円控除は「複式簿記で記帳しているがe-Tax申告の環境がまだ整っていない年」に適用される控除と理解しておくといいでしょう。
よくある誤解
「青色申告=65万円控除」ではない
青色申告というだけでは65万円控除は受けられません。複式簿記での記帳とe-Tax申告(または電子帳簿保存)が必要です。
「会計ソフトを使えば自動的に65万円控除になる」ではない
会計ソフトで複式簿記の記帳をしていても、紙で申告すれば55万円控除です。e-Tax申告への切り替えが別途必要です。
「e-Taxは難しい」は過去の話
マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーから比較的簡単に電子申告できます。
まとめ
- 控除額は記帳方式と申告方法で決まる三段階制
- 10万円:簡易簿記でOK、記帳負担は最小
- 55万円:複式簿記+紙申告、令和2年の改正で65万円から分離
- 65万円:複式簿記+e-Tax申告(または電子帳簿保存)、節税効果が最大
- 10万円と65万円の差は年間**約11万円〜**の節税効果(所得税率・住民税合計)
- 複式簿記で記帳しているなら、e-Tax申告に切り替えて65万円控除を目指すのが合理的
- 事業が赤字の場合、控除しきれなかった分は切り捨てとなり翌年への繰越はできない(ただし純損失の繰越控除とは別の制度)
青色会計は複式簿記による記帳に対応しており、貸借対照表・損益計算書の出力が可能です。e-Taxで申告する際に必要な決算書類を作成できます。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については税理士にご相談ください。